みをつくし料理帖から学ぶ江戸時代の食文化
『みをつくし料理帖』は、江戸時代を舞台にした時代小説の名作で、美味しい食べ物と共に繰り広げられる、大坂出身の若き料理人・澪の心温まる物語です。
彼女の成長と料理を通じた人々との絆が描かれ、読者を当時の食文化と共に、人生の豊かさを再発見させる旅へと誘います。
小説だけでなく、ドラマ、映画、漫画といった多彩なメディアで展開される「みをつくし料理帖」は、料理好きも、時代小説ファンも、すべての人におすすめの作品です。
『みをつくし料理帖』小説概要
『みをつくし料理帖』は、髙田郁氏による日本の時代小説シリーズです。
全10巻からなり、ハルキ文庫(角川春樹事務所)より2009年5月に第1作『八朔の雪 みをつくし料理帖』が刊行され、2014年8月に第10作『天の梯 みをつくし料理帖』で完結しました1。
このシリーズは、享和二年(1802年)、大阪出身の料理人・澪が東西の味の好みや水の違いに苦心しつつも徐々に道を切り開き、料理を通じて人を幸せにしていく姿を描いています。
作中には江戸の食事情が盛り込まれ、作中に登場する料理を著者が試行錯誤を重ねつつ実際に作ったレシピを「澪の料理帖」と題し巻末に収録しています1。
また、登場人物のその後を描いた特別巻『花だより みをつくし料理帖 特別巻』が2018年9月に刊行されています。
著者について
高田郁(タカダカオル)
兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒。1993年、集英社レディスコミック誌『YOU』にて漫画原作者(ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。
2007年、「出世花」で第2回小説NON短編時代小説賞奨励賞を受賞し、作家デビューする。著書に、「みをつくし料理貼」シリーズ、『銀二貫』があります。
1・八朔の雪 みをつくし料理帖(2009年5月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。
大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!
2・花散らしの雨 みをつくし料理帖(2009年10月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい―――。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!
3・想い雲 みをつくし料理帖(2010年3月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だったー。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。
4・今朝の春 みをつくし料理帖(2010年9月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて―――(第一話『花嫁御寮』)。戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは―――(第二話『友待つ雪』)。おりょうの旦那伊左三に浮気の疑惑が!? つる家の面々を巻き込んだ事の真相とは―――(第三話『寒紅』)。登龍楼との料理の競い合いを行うこととなったつる家。澪が生み出す渾身の料理は―――(第四話『今朝の春』)。全四話を収録した大好評シリーズ第四弾!!
5・小夜しぐれ みをつくし料理帖(2011年3月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
季節が春から夏へと移ろい始める卯月のある日。日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。果たして、美緒の縁談の相手とは!?-(第三話『小夜しぐれ』)。表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾。
6・心星ひとつ みをつくし料理帖(2011年8月10日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
酷暑を過ぎた葉月のある午後、翁屋の桜主伝右衛門がつる家を訪れた。伝右衛門の口から語られたのは、手を貸すので吉原にて天満一兆庵を再建しないか、との話だった。 一方登龍楼の采女宗馬からも、神田須田町の登龍楼を、居抜きで売るのでつる家として移って来ないか、との話が届いていた。登龍楼で奉公をしている、ふきの弟健坊もその店に移して構わないとの事に、それぞれが思い揺れていた。つる家の料理人として岐路に立たされた澪は決断を迫られる事に―― 野江との再会、小松原との恋の行方は!?
7・夏天の虹 みをつくし料理帖(2012年5月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か…澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しんでいた。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝えることにー(第一話「冬の雲雀」)。その他、表題作「夏天の虹」を含む全四篇。大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、“悲涙”の第七弾。
8・残月 みをつくし料理帖(2013年2月15日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
吉原の大火、「つる家」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、澪と「つる家」の面々は新たな日々を迎えていた。そんなある日、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる家」を訪れた。あさひ太夫と澪の関係、そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。澪の幼馴染み、あさひ太夫こと野江のその後とはー(第一話「残月」)。その他、若旦那・佐兵衛との再会は叶うのか?料理屋「登龍楼」に呼び出された澪の新たなる試練とは…。雲外蒼天を胸に、料理に生きる澪と「つる家」の新たなる決意。希望溢れるシリーズ第八弾。
9・美雪晴れ みをつくし料理帖(2014年2月14日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしいー。一方で澪も、幼馴染みのあさひ太夫こと野江の身請けについて、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた…。いよいよ佳境を迎える「みをつくし料理帖」シリーズ。幸せの種を蒔く、第九弾。
10・天の梯 みをつくし料理帖(2014年8月8日発売)
内容紹介(「BOOK」データベースより)
『食は、人の天なり』–医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。澪の心星は、揺らぐことなく頭上に瞬いていた。その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか!?厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさとは!?「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。
※各巻の巻末には、各話で取り上げられる料理のレシピ「澪の料理帖」が掲載されています。
『みをつくし料理帖』テレビドラマ概要
テレビ朝日版(2012年)
- 放送日: 2012年9月22日 土曜日、21:00‐23:21
- 主演: 北川景子さん(澪役)
- あらすじ: 大坂出身の料理人・澪が、東西の味の好みや水の違いに苦心しながら、料理を通じて人々を幸せにする物語。
- 特徴:
- 北川景子さんの時代劇初主演。
- 高画質のハイビジョン撮影と原色に近い鮮やかな色彩で時代劇ドラマの新境地を開拓。
- 北川景子さんが本格的な料理訓練を経て、ほぼ吹き替えなしで調理シーンを演じた。
テレビ朝日版(2014年)(第2弾)
- 放送日: 2014年6月8日 日曜日、21:00‐23:10
主な出演者と役柄
- 北川景子(澪役)
- 原田美枝子(芳役)
- 貫地谷しほり(あさひ太夫/野江役)
- 室井滋(おりょう役)
- 片岡鶴太郎(嘉兵衛役)
- 大杉漣(種市役)
- 松岡昌宏(小松原役)
- 平岡祐太(永田源斉役)
- 高橋一生(又次役)
- 光石研(富三役)
- 田口浩正(坂村堂役)
NHK版(2017年、2019年)
2017年版
- 放送期間: 2017年5月13日から7月8日土曜日 18:05‐18:43 全8回
- 主演: 黒木華さん(澪役)
- 特徴: 黒木華さんがすべての料理シーンを吹き替えなしで演じた。
2019年版
- 放送日: 2019年12月14日と21日(2週連続スペシャルドラマ)土曜日 21:00 – 22:13 全2回
- 主演: 黒木華さん(澪役)
- あらすじ: 澪が「つる家」で働き、武家の奥方に料理を教えるストーリー。
主な出演者と役柄(NHK版)
- 安田成美(芳役)
- 小日向文世(種市役)
- 森山未來(小松原役)
- 永山絢斗(永田源斉役)
- 蒔田彩珠(ふき役)
『みをつくし料理帖』映画概要
基本情報
- 公開日: 2020年10月16日
- 監督: 角川春樹
- 脚本: 江良至、松井香奈、角川春樹
- 原作: 髙田郁
- 製作: 前田茂司
- 音楽: 松任谷正隆
- 主題歌: 手嶌葵「散りてなお」(作詞・作曲:松任谷由実)
- 撮影: 北信康(J.S.C.)
- 編集: 太田義則
- 制作会社: 楽映舎
- 配給: 東映
- 上映時間: 131分
- 製作国: 日本
- 言語: 日本語
- 製作費: 3億5000万円
- 配給収入: 2億5000万円
映画の背景
- 製作経緯: 2016年に松竹に企画提案されたが、最終的に東映での製作に。角川春樹が自ら監督を務めることとなった。
- 撮影: デジタル撮影で、料理監修は服部幸應さんと宮澤佳穂さんが担当。撮影は主に江戸ワンダーランド日光江戸村と東京都内の東宝スタジオで行われた。
- 役作り: 松本穂香は服部栄養専門学校で料理を学び、役に臨んだ。
- 主題歌: 松任谷由実さんが作詞・作曲を手掛け、松任谷正隆さんが編曲を担当。
キャスト
- 澪:松本穂香
- 野江(あさひ太夫):奈緒
- 芳(ご寮さん):若村麻由美
- おりょう:浅野温子
- 小松原(小野寺数馬):窪塚洋介
- 永田源斉:小関裕太
『みをつくし料理帖』漫画概要
大ヒットを記録した時代小説シリーズ「みをつくし料理帖」が、待望の完全漫画版として登場!享和二年(1802年)、
淀川の記録的な洪水で両親を亡くし孤独となった少女・澪。彼女は、上方と江戸で異なる料理の風味に困惑しつつも、一人前の料理人へと歩みを進めていく。
シリーズ累計300万部を超えるこの人気作の漫画化シーリーズ全3巻には、原作の髙田郁氏が新たに執筆した特別エッセイも収められています。
みおつくし料理帳 のまとめ
- 「みをつくし料理帖」は累計300万部を突破する大人気時代小説シリーズである
- 主人公は大坂出身の若き料理人・澪で、料理を通じて成長していく姿が描かれる
- 小説は髙田郁によって書かれ、深い人間ドラマと精緻な料理描写が特徴
- テレビドラマ版は2012年、2017年、2019年にNHKで放送され、異なる視点から物語が展開
- 2020年には角川春樹監督による映画版が公開され、松本穂香が主演を務める
- 映画版では原作のストーリーが忠実に再現され、料理シーンも実際に松本穂香が演じる
- 漫画版は小説の魅力を視覚的に楽しめるよう完全漫画化され、特別エッセイも収録
- シリーズは上方と江戸の味の違いや時代背景を丁寧に描き出し、読者に新たな発見を提供
- 各メディアでの展開により、「みをつくし料理帖」は幅広い層に愛される作品となる
- ドラマと映画では、原作にないオリジナルの展開やキャストの新鮮な解釈が魅力
- 時代小説ファンだけでなく、料理や文化に興味がある人にもおすすめのコンテンツ
- 作品を通じて、料理の力で人々を幸せにすることの大切さが伝えられる