『鬼平犯科帳』といえば、長谷川平蔵を演じた中村吉右衛門さんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、映像版の歴史をたどると、鬼平こと長谷川平蔵を演じてきた俳優は一人ではありません。
初代松本白鸚さんから現在の十代目松本幸四郎さんまで、主な映像版では5人の俳優が鬼平を演じてきました。
さらに妻・久栄、岸井左馬之助、佐嶋忠介、相模の彦十など、おなじみの人物も時代とともに俳優が交代しています。
この記事では「この役、昔は誰が演じていたの?」という疑問に答えながら、『鬼平犯科帳』の歴代キャストを役ごとに分かりやすく紹介します。
鬼平犯科帳の歴代キャスト|長谷川平蔵を演じた5人
『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵を演じた主な俳優は、次の5人です。
| 時代 | 長谷川平蔵役 |
|---|---|
| 1969年・1971年版 | 初代松本白鸚(当時・八代目松本幸四郎) |
| 1975年版 | 丹波哲郎 |
| 1980~1982年版 | 萬屋錦之介 |
| 1989~2016年版 | 二代目中村吉右衛門 |
| 2024年~ | 十代目松本幸四郎 |
現在の十代目松本幸四郎さんは、文藝春秋でも「5代目の平蔵」として紹介されています。
初代|初代松本白鸚
最初に長谷川平蔵を演じたのは、当時八代目松本幸四郎を名乗っていた初代松本白鸚さんです。
1969年版と1971年の『新・鬼平犯科帳』で主演しました。
1969年版では、妻・久栄を淡島千景さん、木村忠吾を古今亭志ん朝さん、佐嶋忠介を黒川弥太郎さん、岸井左馬之助を加東大介さんが演じています。
二代目|丹波哲郎
1975年版で鬼平を演じたのが丹波哲郎さんです。
重厚な存在感と迫力ある演技が特徴の鬼平でした。
久栄は小畠絹子さん、佐嶋忠介は小泉博さん、木村忠吾は古今亭志ん朝さん、岸井左馬之助は田村高廣さん、おまさは野際陽子さんです。
三代目|萬屋錦之介
1980年から1982年にかけて鬼平を演じたのが萬屋錦之介さんです。
萬屋錦之介版は3シリーズ制作されました。
久栄は三ツ矢歌子さん。1980・1981年版の相模の彦十は植木等さん、1982年版では西村晃さんへ交代しています。
岸井左馬之助も1980・1981年版では神山繁さん、1982年版では田村高廣さんが演じました。
四代目|二代目中村吉右衛門
1989年から長く長谷川平蔵を演じたのが二代目中村吉右衛門さんです。
『鬼平犯科帳』と聞いて、中村吉右衛門さんの姿を思い浮かべる方が多いのも、このシリーズが長年にわたって親しまれたためでしょう。
代表的なレギュラーには、
- 久栄:多岐川裕美
- 佐嶋忠介:高橋悦史
- 木村忠吾:尾美としのり
- おまさ:梶芽衣子
- 相模の彦十:江戸家猫八
- 小房の粂八:蟹江敬三
などがいます。
テレビシリーズ終了後のスペシャルでは、相模の彦十を長門裕之さんが演じています。
五代目|十代目松本幸四郎
2024年から始まった新しい『鬼平犯科帳』で長谷川平蔵を演じているのが十代目松本幸四郎さんです。
主なキャストは、
- 久栄:仙道敦子
- おまさ:中村ゆり
- 佐嶋忠介:本宮泰風
- 木村忠吾:浅利陽介
- 酒井祐助:山田純大
- 沢田小平次:久保田悠来
- 岸井左馬之助:山口馬木也
となっています。
若き日の長谷川銕三郎、いわゆる「本所の銕」を演じるのは、松本幸四郎さんの長男・市川染五郎さんです。
ちょっと一息|1971年は「父が鬼平、息子が辰蔵」
『鬼平犯科帳』のキャストをたどっていくと、面白い親子のつながりが見えてきます。
1971年の『新・鬼平犯科帳』では、初代松本白鸚さんが長谷川平蔵を演じ、その実子である二代目中村吉右衛門さんが、平蔵の息子・辰蔵を演じていました。
その中村吉右衛門さんが、のちに自ら長谷川平蔵を演じることになります。
さらに現在の鬼平・十代目松本幸四郎さんにとって、中村吉右衛門さんは叔父にあたります。
一つの役が、実際の家族の歴史とも重なりながら受け継がれているのは、『鬼平犯科帳』ならではの興味深いところです。
鬼平犯科帳の妻役は誰?歴代の久栄
長谷川平蔵の妻は久栄(ひさえ)です。
歴代の主な久栄役を並べると、このようになります。
| 鬼平の時代 | 久栄役 |
|---|---|
| 1969年版 | 淡島千景 |
| 1971年版 | 風見章子 |
| 1975年版 | 小畠絹子 |
| 1980~1982年版 | 三ツ矢歌子 |
| 中村吉右衛門版 | 多岐川裕美 |
| 松本幸四郎版 | 仙道敦子 |
初期の作品では鬼平が変わるたびに久栄役も交代しています。
一方、中村吉右衛門版では多岐川裕美さんの久栄が長く親しまれました。
現在の松本幸四郎版では仙道敦子さんが久栄を演じています。
久栄は事件の前面に立つ人物ではありません。
しかし、外では「鬼」と恐れられる平蔵が家へ戻ったときに見せる、夫としての顔を引き出す重要な存在です。
俳優だけでなく、久栄役の女優が変わることで家庭での鬼平の雰囲気にも違いが生まれます。
岸井左馬之助を演じた歴代俳優
岸井左馬之助は、若い頃からの平蔵を知る剣友です。
歴代キャストを調べると、同じ鬼平シリーズの中でも俳優が変わっていることがあります。
| 作品・時代 | 岸井左馬之助役 |
|---|---|
| 1969・1971年版 | 加東大介 |
| 1975年版 | 田村高廣 |
| 1980・1981年版 | 神山繁 |
| 1982年版 | 田村高廣 |
| 中村吉右衛門版 | 江守徹、竜雷太など |
| 松本幸四郎版 | 山口馬木也 |
1975年版で岸井左馬之助を演じた田村高廣さんは、1982年の萬屋錦之介版でも再び同役を演じています。
中村吉右衛門版では江守徹さんが左馬之助を演じた作品がある一方、第5シリーズ第1話「土蜘蛛の金五郎」では竜雷太さんが演じています。
現在の松本幸四郎版では山口馬木也さんが岸井左馬之助です。
佐嶋忠介を演じた歴代俳優
検索では「鬼平犯科帳 佐島役」と調べられることも多いのですが、作品での表記は佐嶋忠介(さじま ちゅうすけ)です。
火付盗賊改方の筆頭与力として、平蔵を支える重要人物です。
| 作品・時代 | 佐嶋忠介役 |
|---|---|
| 1969・1971年版 | 黒川弥太郎 |
| 1975年版 | 小泉博 |
| 1980・1981年版 | 高松英郎 |
| 中村吉右衛門版 | 高橋悦史 |
| 松本幸四郎版 | 本宮泰風 |
初代松本白鸚版では黒川弥太郎さん、丹波哲郎版では小泉博さん、萬屋錦之介版では高松英郎さんが演じています。
中村吉右衛門版の佐嶋忠介として印象深いのが高橋悦史さんです。
現在の松本幸四郎版では、本宮泰風さんが筆頭与力・佐嶋忠介を演じています。
相模の彦十を演じた歴代俳優
相模の彦十は、元盗賊という経歴を生かして平蔵の密偵として働く人物です。
「鬼平犯科帳 彦十役 歴代」と調べる方も非常に多い役です。
主な歴代キャストは次のとおりです。
| 作品・時代 | 相模の彦十役 |
|---|---|
| 初代松本白鸚版 | 河村憲一郎 |
| 丹波哲郎版 | 岡田映一 |
| 1980・1981年版 | 植木等 |
| 1982年版 | 西村晃 |
| 中村吉右衛門版 | 江戸家猫八 → 長門裕之 |
| 松本幸四郎版 | 火野正平 → 尾美としのり |
萬屋錦之介版では、1980年・1981年の彦十が植木等さん、1982年には西村晃さんへ交代しています。
中村吉右衛門版では三代目江戸家猫八さんが彦十を演じ、その後のスペシャルでは長門裕之さんが引き継ぎました。
松本幸四郎版では当初、火野正平さんが彦十を演じていました。
そして2026年の新作から、尾美としのりさんが新たな相模の彦十を演じています。
ちょっと一息|尾美としのりは木村忠吾から彦十へ
新しい彦十役が尾美としのりさんだと聞いて、「あれ? 鬼平に前から出ていなかった?」と思った方もいるかもしれません。
その通りです。
尾美としのりさんは、中村吉右衛門版の『鬼平犯科帳』では同心・木村忠吾を長年演じていました。
そして2026年、松本幸四郎版では密偵・相模の彦十として『鬼平』の世界へ戻ってきました。
若手同心だった俳優が、年月を経て今度は老練な密偵を演じる。
長く続いてきたシリーズだからこそ楽しめる、ちょっと粋なキャスティングです。
2026年の最新「鬼平犯科帳」キャスト
松本幸四郎さん主演の新シリーズは2026年も続いています。
2026年7月10日には、第8弾『鬼平犯科帳 本所の銕』と第9弾『鬼平犯科帳 密告』をまとめた特別先行版『鬼平犯科帳 本所の銕/密告』が劇場公開されました。
主な出演者は、
- 松本幸四郎
- 市川染五郎
- 仙道敦子
- 中村ゆり
- 和田聰宏
- 尾美としのり
- 本宮泰風
- 浅利陽介
- 山田純大
- 久保田悠来
- 山口馬木也
などです。
『本所の銕』では、若き日の長谷川銕三郎を市川染五郎さんが演じています。
現在の平蔵を松本幸四郎さん、若き日の平蔵を息子の市川染五郎さんが演じることで、『鬼平』という人物の過去と現在を親子で描いているのも新シリーズの特徴です。
鬼平こと長谷川平蔵は実在した?

『鬼平犯科帳』はフィクションですが、主人公のモデルとなった長谷川平蔵宣以(のぶため)は実在した人物です。
国立公文書館によると、長谷川平蔵宣以は1745年生まれ。1787年に火付盗賊改となり、凶悪犯や盗賊の取り締まりにあたりました。
さらに平蔵は、無宿者などを収容し、仕事を身につけさせる「人足寄場」の設立にも尽力しています。
ちょっと一息|実在の平蔵も町で人気があった
小説の鬼平は、盗賊には恐れられながらも庶民から慕われる人物として描かれています。
では、これはすべて池波正太郎さんの創作なのでしょうか。
実は国立公文書館が紹介する当時の記録『よしの冊子』には、町の人々が「平蔵様、平蔵様」と喜んでいたという趣旨の記述が残っています。
もちろん小説の事件や人物像がそのまま史実というわけではありません。
それでも、実在の平蔵にも人々から支持された一面があったと分かるのは興味深いところです。
よくある質問
鬼平犯科帳の長谷川平蔵を演じた俳優は何人ですか?
主な実写映像版では5人です。
初代松本白鸚、丹波哲郎、萬屋錦之介、二代目中村吉右衛門、十代目松本幸四郎が長谷川平蔵を演じています。
中村吉右衛門版の妻・久栄役は誰ですか?
多岐川裕美さんです。
中村吉右衛門さん演じる平蔵を家庭で支える久栄役として、長くシリーズに出演しました。
中村吉右衛門版の彦十役は誰ですか?
テレビシリーズでは三代目江戸家猫八さんが代表的です。
その後のスペシャル作品では長門裕之さんが彦十を演じました。
現在の彦十役は誰ですか?
2026年の新作から尾美としのりさんです。
松本幸四郎版では当初、火野正平さんが彦十を演じていました。
現在の岸井左馬之助役は誰ですか?
山口馬木也さんです。
松本幸四郎版で、平蔵の古くからの剣友・岸井左馬之助を演じています。
まとめ
『鬼平犯科帳』では、初代松本白鸚さんから現在の松本幸四郎さんまで、5人の俳優がそれぞれの長谷川平蔵を作り上げてきました。
そして面白いのは、鬼平だけでなく、久栄、岸井左馬之助、佐嶋忠介、彦十といった周囲の人物も時代ごとに俳優が変わっていることです。
同じ原作、同じ人物でも、演じる俳優が変われば作品の空気も変わります。
昔見ていた『鬼平』と現在の『鬼平』を比べながら見ると、長く愛されてきたシリーズならではの楽しさが見つかるかもしれません。
時代劇の歴代キャストがお好きな方は、『必殺仕事人』の歴代キャストもあわせてどうぞ。

参考文献・出典
- BS11「鬼平犯科帳’69」
- BS11「鬼平犯科帳’71」
- BS11「鬼平犯科帳’75」
- BS11「鬼平犯科帳’80」
- BS11「鬼平犯科帳’81」
- BS11「鬼平犯科帳’82」
- BSフジ「鬼平犯科帳 第4シリーズ」
- 文藝春秋「新たな『鬼平犯科帳』が最強のメンバーで!」
- 時代劇専門チャンネル「本所の銕/密告」最新情報
- 国立公文書館「長谷川平蔵と人足寄場」


