日本美術史の巨匠 雪舟の水墨画の魅力
室町時代の水墨画家、雪舟(せっしゅう)は、その独創的な技法と深い禅の哲学を反映した作品で、日本美術史に不朽の足跡を残しました。
『秋冬山水図』や『天橋立図』など、彼の作品は自然との対話を描き出し、見る者に内省を促します。
この記事では、雪舟の代表作を紹介し、彼が日本の水墨画に与えた影響を探ります。
雪舟の作品が今日どこに所蔵されているかも探り、彼の美の世界への扉を開きます。
水墨画雪舟の歴史と影響
水墨画とは
水墨画(すいぼくが)は、唐代に成立したとされる墨で表現される墨絵(すみえ)の代表的画法です。
墨線だけでなく、墨を面的に使用し、ぼかしで濃淡・明暗を表す絵画であり、墨絵とも表記されます。
中国では殷の時代には墨が使用され、墨を用いた絵画も漢の時代には存在したとされています。
唐代には墨の濃淡で表現する絵画が作られるようになり、水墨画は唐代後半に山水画の技法として成立したとされています。
日本においては、水墨画の様式は鎌倉時代に禅とともに伝わり、日本に伝わった絵画は、『達磨図』・『瓢鮎図』などのように禅の思想を表すものであったが、徐々に変化を遂げ、「山水画」も書かれるようになりました。
美術史で「水墨画」という場合には、単に墨一色で描かれた絵画ということではなく、墨色の濃淡、にじみ、かすれ、などを表現の要素とした中国風の描法によるものを指し、日本の作品については、おおむね鎌倉時代以降のものを指すのが通常です。
雪舟とは何をした人ですか
雪舟(せっしゅう、応永27年(1420年)- 永正3年(1506年)8月8日、87歳没)は、室町時代に活躍した水墨画家であり、禅僧でもありました。
彼の芸術的名前「雪舟」は、彼が使用した数多くの号の一つで、本名は「等楊(とうよう)」といいます。
雪舟は備中国(現在の岡山県総社市)に生まれ、幼い頃に宝福寺で出家し、禅僧としての修行を始めました。
その後、京都の相国寺で春林周藤や天章周文に師事し、絵画を学びました。
雪舟は日本美術史上もっとも重要な画家の一人とされ、6件もの作品が国宝に指定されています
雪舟 年表
年齢 | 西暦 | 年号 | 出来事 |
1歳 | 1420年 | 応永27年 | 備中国(現在の岡山県総社市)備中赤浜の武家、小田氏に生まれる |
12歳 | 1431年 | 永享3年 | 宝福寺(岡山県総社市)で出家、禅僧としての修行を始める |
17歳 | 1436年 | 永享8年 | 京都の相国寺に移り、春林周藤、天章周文に絵を学ぶ |
36歳 | 1456年 | 康正2年 | 大内家13代当主で周防・長門・筑前・豊前・肥前守護の大内教弘の招きで山口へ移り、大内氏の庇護を受けました。後、雪舟庭を造営 |
44歳 | 1464年 | 寛正5年 | 山口に雲谷庵を建立 |
45歳 | 1465年 | 寛正6年 | 雪舟と号した |
48歳 | 1467年 | 応仁元年 | 中国に渡り、李在、夏珪などから学ぶ |
50歳 | 1469年 | 文明元年 | 帰国 |
67歳 | 1486年 | 文明18年 | 代表作の一つ「四季山水図(山水長巻)」を描く |
71歳 | 1490年 | 長享2年 | 代表作の1つ「自画像」を描き、弟子の等観に与える 現在は模本が藤田美術館に所蔵されています |
76歳 | 1495年 | 明応4年 | 「破墨山水図」を制作し、弟子の宗淵に与えました この作品は現在、東京国立博物館に所蔵されています |
87歳 | 1506年8月8日 | 永正3年 | 87歳で死去 最期の地は石見国(現在の島根県)益田の大喜庵とされています 大喜庵は、かつて雪舟が滞在し、亡くなったとされる東光寺があった場所に建てられました 雪舟の墓も大喜庵に残されています |
水墨画雪舟 代表作
秋冬山水図 しゅうとうさんすいず(東京国立博物館)
作品の特徴
- 右側に秋、左側に冬の景色を描いた双幅の山水画
- 秋景は、紅葉や柿の木など、秋の色彩を鮮やかに表現
- 冬景は、雪景色や枯れ木など、冬の静寂を表現
- 力強い筆致と繊細な描写、大胆な構図が特徴
- 国宝
四季山水図巻 しきさんすいずかん 毛利博物館(山口県立美術館)
作品の特徴
- 全長10メートルを超える長大な画面に四季の景観を展開させています
- 四季山水図巻は、雪舟晩年の作品と考えられている
- 四季山水図巻は、雪舟の画風の集大成ともいえる作品である
- 国宝
破墨山水図 はぼくさんすいず(東京国立博物館)
作品の特徴
- 明で学んだ「破墨の法」を用いて描かれています
- この作品は、雪舟が修行を終えた弟子の宗淵に与えたもので、雪舟自身の長文の自題があります
- 国宝
慧可断臂図 えかだんぴず(京都国立博物館)
作品の特徴
- 禅の開祖である達磨(だるま)と、彼の弟子である慧可(えか)の逸話を描いています。逸話によると、慧可は達磨の教えを受けるために雪中を訪れますが、達磨に認めてもらえず、その証として自らの腕を断ち切って達磨に捧げたとされます
- 国宝
天橋立図 あまのはしだてず(京都国立博物館)
作品の特徴
- 日本三景の一つとされてい京都府宮津市にある天橋立の風景が描かれています
- サイズは縦89.5cm、横169.5cm
- 天橋立とその周辺が詳細に描き込まれており、智恩寺の多宝塔と成相寺の伽藍が描かれています
- 制作期については諸説あるが、智恩寺に多宝塔が描かれていることから、現存する塔が再建された文亀元年(1501年)以降を一つの目安とし、雪舟80代の最晩年期とする有力な説がある
- 国宝
おすすめ本
水墨画雪舟のまとめ
- 雪舟は室町時代に活躍した水墨画家であり禅僧でもある
- 彼の作品は中国の影響を受けつつ日本独自の水墨画を確立した
- 『秋冬山水図』や『四季山水図巻』など代表作がある
- 作品は墨の濃淡を駆使した自然表現が特徴
- 禅の哲学が作品に深く反映されている
- 『破墨山水図』は水墨画技法の傑作とされる
- 『慧可断臂図』は禅の故事を描いた作品
- 『天橋立図』では日本三景の一つを題材にしている
- 作品は京都国立博物館や個人コレクションなどに所蔵
- 雪舟の作品は後世の画家に大きな影響を与えた
- 水墨画を通じて日本人の自然観や美意識を反映
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